ズデニェック・ミレルZdeněk Miler

~アニメーションとは子どものためのもの~

1921年2月21日クラドノ生まれ。
プラハの国立グラフィック学校で写真を学んだあと、プラハ工芸美術大学でグラフィックや絵画を学びます。1941年、ズリーンのスタジオでセル画アニメーションのアニメーターとして働き始めますが、大戦後、プラハに戻り、45年には当時イジー・トルンカが所長を務めていたアニメーションスタジオ、トリックブラザーズに参加し、監督デビュー作となる「おひさまを盗んだ億万長者」がいきなりヴェネツィア国際映画祭で特別賞を受賞しました。以後2002年まで数々の作品で脚本、美術、監督などをつとめました。50年以上に渡るアニメーション制作で多くの作品に関わりましたが、彼を語るのに欠かせないのは、「もぐらのクルテク」です。

散歩していた時、もぐらの穴に躓いてひらめいたと言われる「もぐらのクルテク」は、彼の代名詞になります。クルテクシリーズの第1作「もぐらくんとズボン」(56)はヴェネツィア国際映画祭等で受賞。60年代のテレビの普及と同時に、子どもたちが毎晩寝る前に観る「ヴェチェルニーチェク(おやすみアニメ)」の人気アニメとして定着し、国民的キャラクターとなります。その人気は国内にとどまらず、世界中の国で「クルテク」は放送された他、絵本も世界中で出版されました。「世界中のこどもに届けたい。」というミレルの思いを表すように、彼の作品は、あまりセリフを入れず、映像と音にこだわりました。こどもが大好きな色や音を常に研究し、作品に反映しました。クルテクの他、こおろぎの冒険を描いた「こおろぎくんシリーズ」や「知りたがりワンちゃんシリーズ」など、優しさにあふれた魅力的なアニメーションを生みだしました。海外での映画祭の受賞は数知れず、世界で最も愛され尊敬されているアニメーション作家の一人で、“子ども向けのアニメーション”に関しては、世界中に並ぶものがいないと言われています。

2006年10月28日には、チェコ建国記念日、経済・学問・文化・芸術等、各ジャンルから選ばれる国に対して功績のあった30名の一人として大統領から功労賞メダルという国家賞が授与されました。それも最高位であるファーストグレードでした。
2011年11月30日逝去。
チェコに行けば、街中にクルテクのグッズがあふれています。 どこに行ってもクルテクが見られます。2011年5月スペースシャトルのエンデバーの最後の打ち上げに、クルテクのぬいぐるみが搭乗しました。
チェコの天文観測所で発見された星が、2011年4月21日、“ズデニェックミレル”と名づけられました。ミレルがクルテクとともに星になったかのようです。

©Země pohádek,a.s., Zdeněk Miler, Little Mole a.s.